最後に君は、何を思ったのだろうか。






ナルミアユムが亡くなった、とキヨタカから電話が来た。
丁度、その日はナルミアユムの誕生日の日。
俺は、誕生日プレゼントということで、アイツの前でピアノを弾こうと思って病院へタクシーで移動していた。
しかし、渋滞により思ったよりも時間がかかることになったのだ。
・・その渋滞で、俺は愛する人の最期を見ることが出来なかった。
何で、こんな日に―・・・・





病院に着き、一目散にアイズは歩の病室へと向かった。
この道のりが、とても長く感じられた。

病室内は、静かだった。
そこには、清隆と涙を流すまどかがいた。
そして、穏やかな顔で眠る歩。



清隆がアイズの方を振りむく。
「・・ラザフォードか。済まないな、折角の希望がこんな様になって。」
「俺はナルミアユムを、唯の希望だけだとは思っていなかったがな。」
「・・・・そうだったな。二人の関係は黙認だった。」
重い沈黙が流れる。
それは、怒りとか、そんな雰囲気ではない。
感じ的に言うのならば、空しさのようなそんな感じ。
その沈黙を破ったのは、清隆の言葉だった。
「・・さ、まどか。ラザフォードも歩に何かあるだろうか、私たちは一旦場所を移そう。」
ニコリと、まどかに微笑を向けて促した。
まどかは、涙を止めることが出来ぬまま微かに首を縦に動かす。
その動作を見逃さず受け止め、清隆はまどかを支えながら病室へと出た。
アイズとすれ違い様に『歩は感謝をしていたぞ』と言って。




そして、病室内はアイズと歩だけになった。
アイズは歩が横たわるベットへと足を進める。
早く歩の顔を見たい、という感情とは裏腹に、
見たら歩の死を受け入れなければならない、という不安が過ぎる。
しかし、アイズは歩の方へと向かった。
歩の顔を見ると、それは安らかだった。
まるで、唯眠っているだけのようなのだ。
きっと、声をかければ『・・・ラザフォード・・・・?』と薄っすらと目を開けてくれる、そんな気がした。
しかし、当たり前だが死体はそんなコトをする訳がない。

「・・アユム。どうして・・どうして、そうやって・・俺の見ていない時に死ぬんだ・・。」
歩の声が、表情が、体が、鮮明に思い出される。
出かけたときの思い出、
嬉しそうに微笑む表情、
出会ったときの歩、
忘れられる訳がない。
愛する人との思い出を。

少しの沈黙の後、アイズは軽く息を吐く。
「・・誕生日プレゼント・・だな。今日はお前の誕生日だ。」
そう言って、アイズは歩のベットに腰掛、ピアノの鍵盤に手を載せる。

弾く曲は、フランツ・リスト作曲詩的で宗教的な調べ第3番『孤独の中の神の祝福』。
ゆっくりと、アイズはピアノを弾き始めた。











アユム・・・聞こえているか?
俺もじき、ヤイバの血に目覚め、正気を失い、ハンター共に狩られていく。
そうすれば、お前と会えるな。
・・・・そう考えれば、
死など怖くない・・んだな。

アユム。
お前に会いたい―・・・。



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おーう、死ネタしか書いてない気がする。(爆
否、それは最終回を迎えてあんな結果になったからだ。(プ
んでもって、柚慧サン大好き死ネタだから。
まともに生前で書きます、ゴメンなさい(土下座